2012年8月20日

残滓

「私、死んじゃうのかな?」

いつまでも止まらない咳をしながら聞くとママは涙ぐみながら黙って微笑んだ。

「違うよ、悪いバイキンがイタズラしてるだけだよ」

同じように赤い目をしたパパが言った。

「少し休みなさい」

いつものようにママが胸を擦ってくれた。

その言葉のままに眠ったのは憶えている。

そして目が覚めた。



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2012年8月14日

少年

額に流れる汗も拭かずに夢中で遊んだ夏休み。 家に帰ると冷えた西瓜と扇風機。

沢山の宿題は憂鬱だったけど夜空に咲く大輪が全てを忘れさせてくれた。

そんな日々は走馬灯のように過ぎ行き、ふと気が付けばあれだけいた蝉は入道雲と消えていた。

かわりに一匹の赤蜻蛉。  飛び去る姿につられて空を仰いで見えた煉瓦建て。

吹く風に「やあ」と秋の声が囁きました。



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2012年5月12日

遭遇

何気なく散策をしている時に、ふと見つける廃墟。

大抵はスルーしますが中にはソソられるモノもあります。

後日に装備を整えて再訪する不安感と期待感にシビれます。

こちらは明治に建てられ現在では所有者が歴史的価値を鑑みて保存されているようです。

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2012年4月17日

エスカレーター

「手こずってるのかい?困ってるように見えるけど。」


いつもの「彼」が話しかけてくる。

「ほんの少しね。」


ほんの小さな声で答えたつもりだったが、前を歩いていた赤ん坊を抱いた女が怪訝そうに白い眼で振り返った。

女の眼は文字通り白く、まるでミルク色のビー玉のように濁っていた。
抱かれた赤ん坊の眼も同じように濁っていた。

なのに不思議と視線だけは感じた。おかしなものだ。
彼らはとても疲れているようだった。
その疲労感は湿気みたいに薄く彼らの周りを覆っていた。

女が前に向き直ったので話を続けた。

「山に行ったんだけど適当な枝振りが見つからなかったのよ。

細かったり、高かくて手が届かなかったりね。

誰かが私みたいなのの為に手入れしちゃってるのかもね。」


「それは、いつも君の言う「センセイ」や「セイジカ」の連中が?」


「手入れは例えよ。本当は山の上まで登れなかったのよ。足が痛くてね。

だから山は諦めたのよ。」


「それじゃあ海の時と同じじゃないか。」


言い返す言葉が無かった。
溺れるのがあれほど辛いとは思わなかった。

「それでも努力はしたわ。頭まで浸かったのよ?12月の海に。」

「彼」は呆れたように溜め息をついた。



象が目一杯に鼻を上げて気持ち良さげに伸びをしていた。


床に倒れた老婆が笑っている。


羽を落としながら蝶は池に沈んでいった。




「それでどうするんだい?」


「飛び降りようと思ってね。」


「そうだね、それは良く解るよ。なにしろビルにきてるんだからね。

僕が聞いているのは何故エレベーターを使わないのか?と言うことだよ。」


「私なりの美学よ。あんまり簡単にフィナーレじゃあ重みってものが足りないでしょう?」


「もちろんだね君の言う通りだ。

しかし新しい問題も発生する。それなら階段を使うべきじゃあないのか?」


「馬鹿ね。しんどいじゃないの。」


「なるほど」


「彼」はとても満足したようだった。


「それじゃあこれで。

見送ってくれてありがとう。」


「ああ、気をつけて。

おかしなものだけどね。」


私は微笑んで振り返った。

いつもどうり「彼」はいなかった。

少し淋しい気もしたけど私は前を向いてエスカレーターを上がった。


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2012年4月15日

一瞬

雲の動きや、太陽の光。時には鳥の羽ばたきさえも。

捉らえてファインダーに閉じ込めれる時間は瞬きの間。

だいたいは摑みそこねますけどね。

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2012年3月12日

目的

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行ってみたい廃墟はあるもののタイミングや懐事情で縁遠い物件があります。

何年も計画を温めて、いざ出発したら解体後なども。
中には眼前で解体をされてるのを見たこともあります。

それらも乗り越えて漸く到達しても期待より見所がなかったり。
ここも少し期待はずれでしたが達成感は十分でした。

2012年2月10日

潜入



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廃墟の愛で方、楽しみ方は人それぞれ。
したり顔で自分の趣味を押し付けるのは品格、センス、知性ともに地面スレスレ。

私は「難関物件を探索」する時が一番テンションが上がります。

ここは、かの夏目漱石氏が講演をしたこともある場所だそうです。

2011年12月30日

区切

本年も多くの皆様の御厚情あって無事に探索する事が出来ました。

来年は未訪の物件は勿論、再探索もして行きたいです。

写真も今までは「良く評価されたい」とばかり考えていましたが
やってみたい表現を優先してステップアップをしていきたいです。

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2011年12月26日

不調

最近、納得のいく写真が撮れずに悩んでいました。

ですが何か方向が見えてきたように思います。

何より楽しくなりました。なんであれ結果が出そうです。

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2011年12月22日

時間

水銀の水面のような固く濃密な空気が辺りを包み込んでいる。

その水面を僕の足音だけが波紋を立て静寂を破る。

束の間の高揚、喧騒そしてやがて訪れるいつもの倦怠。
ここもまた同じ時間が過ぎていただけの事。

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